AI時代の会社経営とは?

しえんグループは、独自に開発・提供している診断サービス「経営力診断」で、経営者の力量を可視化し、それで明らかになった経営課題を改善するサービスを提供してきました。そして、昨今話題になっている「AI時代の会社経営」について、しえんグループは、以下のような考察をしています。

発端は、2030年の就労人口問題

総務省の「平成29年版 情報通信白書」では、2030年の就業者数を5,561万人(ベースシナリオ)・6,300万人(経済成長シナリオ)と推計しています。また、独立行政法人労働政策研究・研修機構は、「2023年度版 労働力需給の推計(速報)」で、2022年の 6,902万人から、2030年に 6,556万人、2040年に 6,002万人と減少すると見込まれるとし、人と組織に関するさまざまな調査・研究活動を実施しているパーソル総合研究所の「労働市場の未来推計 2030」では、2030年、7,073万人の労働需要に対し、人手は644万人不足すると言われています。

2030年には、600万人〜1,000万人の労働者不足となる

労働人口減少が中小企業に与える影響

  1. 労働力不足
    労働力を確保することが難しくなり、生産性の低下や成長機会の制限が生じます。
  2. 成長機会の制限
    新しいプロジェクトや拡張計画を実行するための人手が不足し、競争力の維持が難しくなります。
  3. サービスや製品の質の低下
    十分な人員を確保できないことで、サービスや製品の質が低下し、顧客満足度が低下する可能性があります。

このように、労働人口減少からくるマイナスの影響は、中小企業にとっては存続の危機ともいえる困難になるといえます。

人材育成が難しい中小企業

2030年以降、労働人口が急減少する理由は、少子高齢化によって生産年齢人口率が急激に下がるという人口予測にあります。前述のパーソル総合研究所では、644万人不足する人手を4つの施策で埋めるとしています。

  1. 働く女性を増やす・・・102万人(15.8%)
  2. 働くシニアを増やす・・・163万人(25.3%)
  3. 働く外国人を増やす・・・81万人(12.5%)
  4. 生産性を上げる・・・298万人(46.2%)

一般的には、労働者の急激な不足を新たな雇用と生産性向上で補おうとしていますが、人材育成力に乏しく、労働市場で大手に勝てない中小企業は、生産性を上げることにリソースを集中しないと生き残れない状況になったといえます。

中小企業は、現状維持でも30%以上の生産性向上が必須

しかし、この「生産性向上」には、中小企業においては、大きな誤解と間違った手法が蔓延しています。

生産性向上=ICT化(DX推進)ではない

生産性向上において、最も効果が発揮できるのは、ICT化(DX推進)であることは、間違いありません。ただし、これはシステムインフラの運用が可能な大手・中堅企業に限ります。

システム導入には、ある程度高額な初期投資が必要であり、またシステムを維持管理していくためのシステム・マネジメントリソースが必要です。ただでさえ人手不足の中小企業には、このリソースを十分に確保することは難しく、アウトソーシングに頼るにしても、その費用の捻出やディレクションできる従業員がいないため、ROIで見ると逆に生産性を下げる場合すら発生しています。

また、ICT活用のために業務をDX化するには、業務そのものを可視化するのが大前提となりますが、従業員の業務範囲が広く、職務内容や権限が曖昧な中小企業では、この前提を整えるのも困難なのです。

ICTよりEAP

生産性向上は、急務ですが、その成果を大いに期待できるICT化(DX推進)は、中小企業にとっては難題といえます。しえんグループは、まず、中小企業がICT化を実現できるような環境を整えることを推奨しています。

ICTよりコストのかからないEAPを推奨

中小企業では、短期的な生産性向上を達成するためには、DX推進よりもEAP(従業員支援プログラム)を導入する方が成功の確率が高いと考えます。EAPの導入により、従業員のストレス軽減やメンタルヘルスケアが強化され、結果的に従業員のパフォーマンスが向上し、組織全体の生産性向上に寄与します。

EAP(従業員支援プログラム)を導入すると、生産性が向上する主な理由は以下の通りです

  1. ストレス軽減
    従業員のストレスを軽減し、精神的な健康を維持することで、集中力やモチベーションが向上します。
  2. 離職率の低下
    メンタルヘルスケアや職場環境の改善により、従業員の定着率が上がり、経験豊富な人材の流出を防ぎます。
  3. 業務効率の向上
    健康でモチベーションの高い従業員が効率的に働くことで、全体の業務効率が向上します。
  4. コミュニケーションの改善
    サポートを通じて職場内のコミュニケーションが円滑になり、チームワークが強化されます。

能力よりコミュ力

生産性を向上させるためには、人材採用の基準も変えていく必要があります。生産性を向上させるには、個々人の能力よりもチームワークが重要になってきます。その理由は以下の通りです。

  1. 情報共有と意思決定の迅速化
    効果的なコミュニケーションは、社内での情報共有を円滑にし、意思決定を迅速化します。従業員が必要な情報に素早くアクセスできるようになることで、問題解決が迅速に行われ、全体の業務効率が向上します。
  2. チームワークと協力の強化
    コミュニケーション力が向上すると、チーム内での信頼関係が強まり、協力しやすい環境が整います。これにより、チーム全体が一体となって目標に向かって取り組むことができ、生産性が向上します。
  3. ストレスと職場満足度の向上
    良好なコミュニケーションは、職場でのストレスを軽減し、従業員の満足度を高めます。従業員が意見を自由に言える環境が整うことで、職場の雰囲気が改善され、結果的にモチベーションと生産性が向上します。
  4. イノベーションの促進
    開かれたコミュニケーションが促進されると、従業員は新しいアイデアや創造的な解決策を自由に提案できるようになります。これが、企業内でのイノベーションを生み出し、競争力の強化に繋がります。
  5. 生成AIの活用
    生成AIを効果的に活用するためには、AIとの適切なコミュニケーションが不可欠です。従業員がAIに対して正確な指示を与え、AIからの出力を適切に解釈する能力が、生産性の向上に直接寄与します。

利益より価値

生産性向上に加えて、事業利益よりも事業価値を重要視することが、企業の持続可能な成長、顧客との長期的な関係構築、従業員のエンゲージメント向上、市場での競争優位性、そして経営の安定性を確保するために不可欠になるとしえんグループは考えます。

短期的な事業利益は、迅速な収益獲得を示すものですが、これに焦点を当てすぎると、持続可能な成長が損なわれる可能性があります。事業価値を重視することで、企業は長期的な視点から戦略を立てることができ、市場での信頼とブランド力を強化できます。これは、競争が激化する市場環境において、企業が生き残り、成長し続けるための基盤となります。

資金面でも経営を支援します

最後に、生産性向上のための施策を実行するには、設備投資やICTの導入、従業員の教育訓練など、多額の資金が必要です。中小企業にとって、これらの投資は経営に大きな負担をかけることが多く、資金繰りが課題となります。特に、新しい技術や設備の導入には初期投資が必要であり、資金不足が原因でこれらの取り組みを断念せざるを得ないケースも少なくありません。

しえんグループは、このような資金の問題を軽減するために、助成金や補助金の申請をサポートするサービスを提供しています。助成金や補助金は、政府や自治体から支給される資金であり、企業が生産性向上や業務改善のための取り組みを行う際に、その費用の一部をカバーするものです。